脳梗塞で障害年金はもらえる?受給額の目安・申請手続の流れ・注意点を社労士が徹底解説
目次
ご家族が脳梗塞を発症し、後遺症によって仕事や日常生活に支障が出ていると、「今後の生活費はどうなるのか」「もう働けないかもしれない」「障害年金の対象になるのだろうか」と不安を感じる方は少なくありません。
脳梗塞は、障害年金の対象となる可能性がある病気です。
特に、会社員や公務員など厚生年金に加入していた方は、障害基礎年金に加えて障害厚生年金を受け取れる場合があり、年金額が大きくなることがあります。
この記事では、脳梗塞で障害年金を検討しているご本人やご家族に向けて、次の点を分かりやすく解説します。
✅脳梗塞で障害年金を受給できる条件
✅脳梗塞の後遺症と障害年金の認定基準
✅脳梗塞の障害年金はいくらもらえるのかという目安
✅遡及請求(さかのぼり請求)が可能なケース
✅ご家族が今からやるべきこと
✅申請で失敗しないための注意点
ご家族が「うちの夫も対象かもしれない」「一度相談してみた方がよさそう」と判断できるよう、できるだけ平易な言葉でまとめています。ぜひ最後までご覧ください。
1. 脳梗塞と障害年金の基本
障害年金とは?現役世代も対象になる公的年金です
障害年金とは、病気やけがによって、生活や仕事に制限が生じたときに受け取れる公的年金です。
年金というと「65歳からもらう老齢年金」をイメージされる方が多いのですが、公的年金には主に次の3種類があります。
|
年金の種類 |
内容 |
|
老齢年金 |
原則として高齢になったときに受け取る年金 |
|
遺族年金 |
亡くなった方に生計を支えられていた家族が受け取る年金 |
|
障害年金 |
病気やけがで生活・仕事に支障が出たときに受け取る年金 |
つまり、障害年金は現役世代でも対象になる制度です。
50代で働き盛りの方が脳梗塞を発症し、後遺症で復職が難しくなった場合でも、受給の可能性があります。
脳梗塞・脳出血・くも膜下出血も障害年金の対象です
脳血管疾患には、主に次のような病気があります。
- 脳梗塞
- 脳出血
- くも膜下出血
これらの病気によって、たとえば次のような後遺症が残ることがあります。
- 片麻痺(右半身麻痺・左半身麻痺)
- 歩行障害
- 手がうまく使えない
- 言葉が出にくい(失語症)
- 記憶力や注意力の低下
- 段取りよく行動できない
- 感情のコントロールが難しい
このような後遺症により、日常生活や就労に支障がある場合、脳梗塞の後遺症で障害年金の対象となる場合があります。
障害基礎年金と障害厚生年金の違い
障害年金は、初診日に加入していた年金制度によって、受け取れる種類が変わります。
|
初診日に加入していた年金 |
受け取れる可能性がある年金 |
|
国民年金 |
障害基礎年金 |
|
厚生年金 |
障害基礎年金 + 障害厚生年金 |
会社員や公務員の方は、通常、厚生年金に加入しています。
そのため、脳梗塞の初診日が厚生年金加入中であれば、障害基礎年金に加えて障害厚生年金が上乗せされる可能性があります。
この点が、自営業の方などと比べて、受給額が大きくなりやすい理由です。
2. 脳梗塞で障害年金を受給するための3つの要件
脳梗塞で障害年金を受給するためには、主に次の3つの要件を満たす必要があります。
① 初診日要件|脳梗塞の初診日にどの年金に加入していたか
「初診日」とは、障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師の診療を受けた日をいいます。
脳梗塞の場合は、救急搬送や初回受診の日が初診日になることが多いです。
この初診日に、
- 国民年金に加入していたか
- 厚生年金に加入していたか
によって、受給できる年金の種類が変わります。
特に50代の会社員の方は、初診日が厚生年金加入中であることが多く、障害厚生年金の対象になりやすいのが特徴です。
② 保険料納付要件|保険料の未納が多いと対象外になることも
障害年金は、初診日までの保険料の納付状況も確認されます。
一般的には、次のいずれかを満たす必要があります。
- 初診日の前日時点で、加入期間のうち3分の2以上の期間で保険料を納めていること
- または、初診日の前々月までの直近1年間に未納がないこと
会社員の方は給与から天引きされていることが多いため、保険料納付要件を満たしているケースが多いですが、転職や離職の時期によっては確認が必要です。
③ 障害認定日の要件|脳梗塞には特例があります
原則として、障害年金は障害認定日に一定の障害状態にあることが必要です。
通常、障害認定日は初診日から1年6か月を経過した日です。
しかし、脳梗塞では重要な特例があります。
【重要】脳梗塞の障害認定日特例:初診日から6か月で請求できる場合があります
脳梗塞・脳出血などの脳血管疾患では、初診日から6か月以上経過した後に、医師が「症状固定」と判断した日が障害認定日になる場合があります。
「症状固定」とは、簡単にいうと、これ以上大きな改善や悪化が見込みにくく、障害の状態が固まったと医師が判断した状態です。
この特例があることで、通常の1年6か月を待たずに、
- 早期に障害年金を請求できる
- 障害認定日時点の状態で請求しやすくなる
- 結果として遡及請求(さかのぼり請求)につながりやすい
というメリットがあります。
特に、発症から時間が経っているのにまだ申請していない方は、この特例の影響で過去分を受け取れる可能性があります。
3. 脳梗塞の障害年金の認定基準
脳梗塞で障害年金が認められるかどうかは、病名だけで決まるわけではありません。
大切なのは、どのような後遺症があり、日常生活や仕事にどの程度支障があるかです。
肢体の障害(片麻痺など)
脳梗塞の後遺症として多いのが、片麻痺や歩行障害です。
この場合、次のような点をもとに総合的に判断されます。
- 関節可動域(手足がどの程度動くか)
- 筋力
- 日常生活動作
- 巧緻性(細かい動き)
- 速さ
- 耐久性
たとえば、次のような状態は重要な判断材料になります。
- 杖や装具がないと歩行が難しい
- 階段の昇降が難しい
- 利き手が使えず、着替えや食事に介助が必要
- トイレや入浴に支障がある
高次脳機能障害(記憶障害・注意障害・遂行機能障害など)
脳梗塞の後遺症では、見た目には分かりにくい高次脳機能障害が残ることもあります。
代表的な症状は次のとおりです。
- 記憶障害
- 注意障害
- 遂行機能障害(段取りよく物事を進められない)
- 社会的行動障害
- 感情コントロールの難しさ
このような症状があると、身体の麻痺が軽く見えても、仕事復帰や日常生活に大きな支障が出ることがあります。
障害年金では、身体機能だけでなく、認知面・行動面の障害も重要です。
言語機能の障害(失語症など)
脳梗塞によって、言葉が出にくい、理解しづらいといった失語症が生じることがあります。
- 会話が成り立ちにくい
- 指示が理解しづらい
- 電話対応や接客ができない
- 書類作成や業務連絡が困難
このような言語機能の障害も、障害年金の対象となる場合があります。
複数の障害が併存する場合は「併合認定」もあります
脳梗塞では、
- 片麻痺
- 高次脳機能障害
- 失語症
などが同時に残ることもあります。
このように複数の障害が併存する場合は、併合認定といって、障害全体を総合的に評価して等級が判断されることがあります。
そのため、「麻痺だけなら軽いかもしれない」と感じる場合でも、高次脳機能障害や言語障害を含めることで対象になる可能性があります。
4. 脳梗塞で障害年金はいくらもらえる?【受給額の目安】
「脳梗塞で障害年金はいくらもらえるのか」は、多くのご家族が気になる点です。
ここでは、令和8年度(2026年度)の金額をもとに、脳梗塞の障害年金の受給額の目安を解説します。
※以下の金額は目安です。実際の受給額は、生年月日、厚生年金の加入期間、報酬額、家族構成などにより異なります。
障害基礎年金の額(令和8年度の目安)
|
等級 |
年額 |
月額の目安 |
|
1級 |
1,059,125円 |
約88,260円 |
|
2級 |
847,300円 |
約70,608円 |
子の加算
18歳到達年度末までの子(または一定の障害のある20歳未満の子)がいる場合、次の加算があります。
|
子の人数 |
加算額(年額) |
|
1人目・2人目 |
各234,800円 |
|
3人目以降 |
各81,300円 |
障害厚生年金の額(会社員・公務員の方)
障害厚生年金は、報酬比例部分があるため、給与水準や加入期間によって個人差があります。
ただし、厚生年金加入中に脳梗塞を発症した50代の会社員の方は、比較的年金額が大きくなりやすい傾向があります。
配偶者加給年金
障害厚生年金1級または2級に認定され、生計維持関係にある65歳未満の配偶者がいる場合、次の加給年金がつくことがあります。
|
加算項目 |
加算額(年額) |
|
配偶者加給年金額 |
234,800円 |
50代会社員の脳梗塞 障害厚生年金の目安
たとえば、平均年収500万円・厚生年金加入25年の方を想定した場合の目安は次のとおりです。
|
ケース |
年金種類 |
年額の目安 |
補足 |
|
2級 |
障害基礎年金 + 障害厚生年金 + 配偶者加給年金 |
約180万~200万円 |
配偶者が65歳未満の場合の参考 |
|
1級 |
障害基礎年金 + 障害厚生年金 + 配偶者加給年金 |
約220万~250万円超 |
1級は2級の1.25倍の取扱いが基本 |
受給額のまとめ表【脳梗塞 障害年金 いくら?】
|
対象者の例 |
想定等級 |
年額の目安 |
月額の目安 |
|
国民年金のみ・2級 |
障害基礎年金2級 |
847,300円 |
約70,608円 |
|
国民年金のみ・1級 |
障害基礎年金1級 |
1,059,125円 |
約88,260円 |
|
会社員・50代・平均年収500万円・2級 |
障害厚生年金2級含む |
約180万~200万円 |
約15万~16.7万円 |
|
会社員・50代・平均年収500万円・1級 |
障害厚生年金1級含む |
約220万~250万円超 |
約18.3万~20.8万円超 |
年金生活者支援給付金について
障害年金を受給する方のうち、一定の所得要件などを満たす場合は、年金生活者支援給付金の対象となることがあります。
これは障害年金とは別の制度で、生活の支えになる可能性があります。
ただし、所得や扶養状況などの条件がありますので、該当するかは個別の確認が必要です。
5. 脳梗塞の障害年金で「遡及請求(さかのぼり請求)」が可能なケース
遡及請求(さかのぼり請求)とは?
遡及請求とは、過去の障害認定日時点で障害等級に該当していた場合に、そこまでさかのぼって障害年金を請求する方法です。
認められると、最大5年分の年金を一時金として受け取れる可能性があります。
脳梗塞で遡及請求しやすい理由
脳梗塞は、前述のとおり、初診日から6か月以上経過後に症状固定が認められれば、通常より早い時点で障害認定日になる特例があります。
そのため、
- 当時すでに後遺症が重かった
- 症状固定の診断があった
- 当時の診断書やカルテを取得できる
という場合には、遡及請求が認められる可能性があります。
特に、発症後しばらくリハビリや生活再建を優先し、障害年金の申請が後回しになっていたご家庭では、後から申請して過去分を受け取れるケースがあります。
遡及請求の具体例【参考例】
たとえば、次のようなケースが考えられます。
- 55歳男性
- 3年前に脳梗塞を発症
- 現在も右片麻痺があり、復職困難
- 発症から6か月経過時点で症状固定と診断されていた
- 当時の診断書を取得できた
このような場合、障害認定日時点の状態で2級相当と認められれば、
- 約400万円前後の一時金
- 月額約16万円前後の障害年金
を受け取れる可能性があります。
※あくまで参考例です。実際の支給額は加入歴・報酬額・家族構成・診断書内容によって異なります。
数年前に脳梗塞を発症し、まだ申請していない方へ
「もう何年も経っているから無理だろう」
「今さら障害年金の相談をしても遅いのでは」
このように思われる方もいらっしゃいます。
しかし、数年前の脳梗塞でも、遡及請求ができる可能性はあります。
特に次のような方は、一度確認をおすすめします。
- 発症から6か月以上経っても後遺症が強く残っていた
- その後も仕事復帰が難しい
- まだ障害年金を申請していない
- 当時の通院先が分かる
- ご家族が「もっと早く知りたかった」と感じている
時効の関係で、遡及できるのは原則として最大5年分までです。
迷っているうちに受け取れるはずの年金が減ってしまうこともありますので、早めの確認が大切です。
6. ご家族が脳梗塞になった場合にやるべきこと
脳梗塞は突然起こることが多く、ご本人もご家族も手続きどころではない状況になりがちです。
それでも、将来の障害年金申請を見据えると、次の点を意識しておくことが大切です。
初診日の記録を残す
障害年金では、初診日の証明がとても重要です。
次の情報は、早めにメモや写真で残しておくことをおすすめします。
- 最初に受診した病院名
- 受診日
- 紹介状の有無
- 救急搬送された日時
- 入院日・退院日
後から病院名や受診日が分からなくなると、申請準備に時間がかかることがあります。
傷病手当金の手続きを確認する
会社員の方が仕事を休む場合、まず確認したいのが傷病手当金です。
傷病手当金は、健康保険から支給される制度で、休職中の生活費を支える大切な制度です。
障害年金と並行して検討することが多いため、
- 会社へ申請しているか
- 支給開始日がいつか
- 支給終了時期がいつか
を把握しておくと安心です。
障害年金の申請タイミングを把握する
脳梗塞の障害年金は、次のどちらかのタイミングが重要です。
- 初診日から1年6か月
- 初診日から6か月以上経過後に症状固定と判断された日
このタイミングを知らないと、「まだ早いと思っていた」「本当はもっと早く申請できた」となることがあります。
専門家(社労士)へ早めに相談することが大切です
脳梗塞の障害年金では、
- 身体障害
- 高次脳機能障害
- 言語障害
- 症状固定の特例
- 遡及請求の可否
など、確認すべき点が多くあります。
また、ご本人が体調や認知面の問題で動けないケースも少なくありません。
そのため、ご家族が早めに相談し、申請時期や必要書類を整理しておくことが重要です。
7. 脳梗塞の障害年金 よくあるご質問
Q. 働きながらでも障害年金はもらえますか?
はい、働いていても障害年金を受給できる場合があります。
障害年金は、「働いているかどうか」だけで一律に決まる制度ではありません。
実際には、仕事内容、勤務の配慮の有無、出勤状況、日常生活への支障なども踏まえて判断されます。
Q. 脳梗塞の後遺症が軽い場合でも対象になりますか?
はい、対象になる可能性があります。
特に、厚生年金加入中の初診日であれば、3級(障害厚生年金のみ)に該当する可能性があります。
見た目には軽く見えても、
- 手先が不自由
- 長時間の歩行が困難
- 高次脳機能障害で仕事に支障がある
といった事情があれば、個別に検討する価値があります。
Q. 家族が代わりに申請の手続きをできますか?
はい、ご家族が手続きを進めることは可能です。
また、社労士に依頼すれば、必要書類の収集や申請手続きを代理・サポートしてもらえます。
ご本人が体調面や認知面の問題で手続きが難しい場合には、ご家族のサポートが非常に重要です。
Q. 障害者手帳がなくても障害年金は申請できますか?
はい、申請できます。
障害者手帳と障害年金は別の制度です。
障害者手帳を持っていなくても、障害年金の対象になる場合はありますし、逆に手帳があっても必ず障害年金が認められるわけではありません。
Q. リハビリ中でも申請できますか?
はい、リハビリ中でも申請可能な場合があります。
特に脳梗塞では、初診日から6か月以上経過後に医師が症状固定と判断した場合、1年6か月を待たずに請求できる可能性があります。
「リハビリ中だからまだ無理」と決めつけず、一度確認してみることをおすすめします。
8. まとめ:脳梗塞の障害年金は早めの相談がカギ
脳梗塞では、片麻痺や歩行障害だけでなく、高次脳機能障害や失語症などにより、障害年金の対象となる可能性があります。
特に、厚生年金加入中の50代の方は、障害厚生年金が上乗せされるため、受給額が大きくなりやすい傾向があります。
さらに、配偶者加給年金や子の加算がつくことで、ご家族全体の生活の支えになることもあります。
また、脳梗塞には障害認定日の特例があり、初診日から6か月以上経過後に症状固定と判断されれば、早期の請求や遡及請求につながる場合があります。
「まだ申請できるか分からない」
「うちの場合はいくらくらいになるのだろう」
「本人が手続きを進められない」
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最終更新日 7日
著者

- 社会保険労務士
-
はじめまして。「東京新宿・渋谷障害年金プラザ」を運営する横堀健社会保険労務士事務所の横堀健です。
障害年金は、身体障害だけでなく、知的障害や精神疾患、ガン、脳血管疾患、心疾患、糖尿病などにより生活や仕事に支障がある方を対象とした公的年金制度です。しかし、認知度が低く、受給資格があるのに請求していない方が多くいらっしゃいます。さらに、手続きが複雑なため、途中で諦めてしまう方も少なくありません。
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