双極性障害で障害年金はもらえる?受給の条件・申請手続の流れ・注意点を社労士が徹底解説
双極性障害とは?
双極性障害は、気分の極端な変動を特徴とする慢性的な精神疾患です。躁状態(または軽躁状態)と抑うつ状態が交互または混在して現れることで、日常生活や社会活動に大きな影響を及ぼす場合があります。 双極性障害の基本的な特徴は以下の通りです。
躁状態または軽躁状態
この状態では、高揚感や過度のエネルギー、自己評価の過剰、衝動的な行動が見られます。一時的に集中力が向上し、生産性が上がることもありますが、判断力の低下やリスクの高い行動に繋がることもあります。
抑うつ状態
深い悲しみや無気力、かつて楽しんでいた活動への興味や喜びの喪失が特徴です。睡眠障害(過眠または不眠)、食欲や体重の変化、集中力の低下、慢性的な疲労感など、身体的・認知的な症状が伴うことが多いです。
気分の変動
躁状態と抑うつ状態のエピソードは個々に異なり、その出現や期間、重症度には個人差があります。これにより、気分の安定が難しくなるため、治療や生活の調整が重要となります。
双極性障害は、複数の要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。家族歴がある場合、遺伝的な素因が大きく影響し、脳内の神経伝達物質の調整やホルモンバランスの変動など、生物学的な側面が関与することが知られています。一方で、重大なライフイベントや対人関係のトラウマ、強いストレスなどの環境的要因も、双極性障害のエピソードの引き金となり、生活環境や社会的支援の不足が症状の出現に寄与する可能性もあるようです。
障害年金とは
「障害年金」とは、公的な年金の1つで、病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の方も含めて受け取ることができる年金です。
障害者のための特別な手当や、事故や労災などによるケガでないと申請できない、と勘違いされている人もいますが、実は老齢年金と同じ公的年金です。
もちろん双極性障害も障害年金の対象傷病です。
障害年金の受給要件を満たしているのに、障害年金を申請しないというのは、65歳になっても老齢年金を受け取っていないようなものなので、特別な事情のない限りは障害年金の受給をお勧めします。
障害年金を受け取るための条件
障害年金を受け取るためにはいくつかの条件を満たさなければなりません。
申請の前に、条件を満たしているか必ず確認しましょう。
①初診日要件
国民年金、厚生年金、共済年金へ加入していた期間中に、その障害の原因となった病気やケガを医師や歯科医師に診察してもらっていることが必要です。
この診察を初めて受けた日を「初診日」といいます。健康診断で異常がみつかった日や、誤診を受けた日が初診日とみなされることもありますのでご注意ください。
②保険料納付要件
この保険料納付要件が満たされないと、一生この病気やケガを原因とする障害年金はもらえません。
初診日の前日に、その初診日のある月の前々月までの期間の3分の2以上が、次のいずれかの条件に当てはまっている必要があります。
- 保険料を納めた期間(会社員や公務員の配偶者だった期間も含む)
- 保険料を免除されていた期間(全部免除、一部免除)
- 保険料納付猶予期間(学生納付猶予など)
- 合算対象期間(いわゆるカラ期間)
20歳以降初診日の前々月までの被保険者であった期間のうち、3分の1を超える期間の保険料が未納でなければ大丈夫です。
実際に保険料を納めていた期間だけでなく、正式に保険料が免除されていた期間も、納めていたものとして扱われます。
上記の要件には当てはまらなくても、令和8年3月31日までに初診日がある場合は、初診日の前日に、その前々月までの1年間に保険料の未納がなければ要件を満たすことができます。
(※20歳前の年金制度に加入していない期間に「初診日」がある場合は、納付要件は不要です)
③障害認定日の要件
障害年金を受けられるかどうかは、障害認定日に一定以上の障害状態にあるかどうかで判断されます。
障害認定日とは、初診日から1年6か月が経過した日か、1年6か月が経過する前に症状が固定し、それ以上治療の効果が期待できない状態となった日のことです。
例外
下記の状態になった場合も障害認定日として扱われます。
- 咽頭全摘出・・・摘出した日
- 在宅酸素療法・・・常時使用を開始した日
- 人工透析をしている場合・・・人工透析開始から3ヶ月を経過した日
- 心臓ペースメーカー、人工弁、CRT、心臓移植、人工心臓を装着(移植)した場合・・・装着(移植)した日
- 人工肛門造設、尿路変更術・・・造設日(手術日)から起算して6か月経過した日
- 新膀胱・・・造設した日
- 遷延性植物状態・・状態に至った日から3か月を経過した日
- 人工骨頭、人工関節を挿入置換した場合・・・挿入置換した日
- 手足の切断の場合・・・切断された日
- 脳梗塞、脳出血による肢体障害の場合・・・初診日から6ヶ月以上経過後の医師が症状固定と判断した日
この障害認定日に一定の障害状態にあると認められると、その翌月から年金が支給されます。
これを、障害認定日請求と呼び、もし請求が遅れても最大5年遡って支給されます。
そのほか、障害認定日に障害の状態が軽かったとしても、のちに悪化する場合もあります。
この時は「事後重症請求」という形で申請することも可能です。
④受給できるのは原則20歳から64歳まで
障害年金は原則20歳から64歳までの人が受給できます。
65歳以上は老齢年金と障害年金のどちらかを選択するか、または併給調整がかかり、最終的にもらえる金額が変わらない場合があるため注意が必要です。
双極性障害の認定基準
障害年金を受け取るためにはそれぞれの傷病の「認定基準」を超えていることが重要となります。
双極性障害をはじめとした精神疾患の「認定基準」は以下のように示されています。

これを簡単なイメージで表すと
- 1級:常時の介助が必要で、日常生活が自力で行えない状態。
- 2級:日常生活に著しい制限があり、労働ができない状態。
- 3級(厚生年金のみ):労働に著しい制限が必要な状態。
となります。
またこの障害の状態にあるのは初診日から1年6か月経過した日(認定日)であることが必要です
『精神の障害に係る等級判定ガイドライン』
双極性障害などの精神疾患は検査数値など客観的な基準を設けにくいため、認定する医師によって等級判定に差が出てしまう場合があります。
そのため、精神疾患に関して、認定基準のほか、ある程度客観的な基準を定めた等級判定ガイドラインが新設されました。
このガイドラインは、診断書裏面にある「日常生活能力の判定」を数値化して出した7項目の平均値と「日常生活能力の程度」をそれぞれ下記の表にあてはめて、障害等級1級~3級の判断を行います。(※ガイドラインはあくまで目安となっています。)

「日常生活能力の平均判定」の算出方法

等級判定にあたっての注意点
ガイドラインには「留意事項」として下記のような文言が記載されています。
これをまとめると、ガイドラインが参考にできない場合は診断書などに基づいて総合的な判断がなされるということです。
【「日常生活能力の程度」の評価と「日常生活能力の判定」の平均との整合性が低く、参考となる目安がない場合は、必要に応じて診断書を作成した医師に内容確認をするなどしたうえで、「日常生活能力の程度」及び「日常生活能力の判定」以外の診断書等の記載内容から様々な要素を考慮のうえ、総合評価を行う。】
ガイドラインは障害年金の申請上、大切な指標ですが、あくまで目安とされており、このガイドラインだけで支給・不支給が決定されるわけではないことに注意が必要です。
双極性障害で障害年金を受け取るためのポイント
診断書に日常生活が適切に反映されているか確認しましょう
障害年金の申請には診断書が非常に重要となってきます。
障害年金を受給できるか、できないかの9割が診断書で決まるといっても過言ではありません。ですが、医師は病院で受診をした際の状況で症状の状態を判断しているため、普段の生活状況を加味して診断書を書くことが非常に困難です。
また、双極性障害などの精神疾患の場合には比較的体調の良い時に病院に行く傾向があるため、実際の状態よりも軽い症状として診断書を書かれてしまう場合があります。
診断書を書いてもらう際にはご自身の普段の生活状況など、医師から見えない範囲の生活状況も適切に反映されているかを確認しましょう。
初診日がいつかを確認しましょう
初診日の確認は障害年金の申請上、細心の注意が必要な作業です。
特に、精神疾患の場合、精神科の前に、頭痛や不眠といった初期症状で内科を受診している場合があります。
この時、初診日は精神科を受診した日ではなく、内科を受診した日となります。
初診日がいつかによって障害年金を受け取れなくなってしまったり、逆に受け取れるようになる場合もあるため、初診日は正確に把握するようにしましょう。
よくあるご質問
Q1. 双極性障害でも障害年金はもらえますか?
はい、双極性障害は障害年金の対象傷病です。
ただし、受給可否は病名だけで決まらず、躁・うつの症状により日常生活や就労にどの程度支障が出ているか(障害の状態)が審査の中心になります。
Q2. 双極性障害で障害年金を受給するための条件(要件)は何ですか?
主に次の要件を満たす必要があります。
-
初診日要件(初診日が公的年金の加入期間中であること等)
-
保険料納付要件(原則、加入期間の一定割合が納付・免除)
-
障害状態要件(障害認定日に等級に該当する状態)
この3つが揃って受給の可能性が出ます。
Q3. 双極性障害の初診日とはいつですか?
初診日は、原則として双極性障害の症状で最初に医師の診療を受けた日です。
精神科が初診日とは限らず、不眠・頭痛・動悸・体調不良などで内科等を先に受診していると、その日が初診日になることがあります。初診日の判断は受給可否に直結します。
Q4. 双極性障害は「躁のとき元気」に見えますが、審査に不利ですか?
「元気に見える」こと自体が直ちに不利とは限りません。
審査では、躁状態の衝動性・判断力低下による生活上のトラブル、抑うつ期の著しい活動低下、波の大きさ、支援の必要性など、生活・就労への影響として総合評価されます。良い時の様子だけで判断されないよう、普段の支障を具体化することが重要です。
Q5. 障害認定日とはいつで、いつから年金が支給されますか?
障害認定日は、原則として初診日から1年6か月経過した日(または症状固定日)です。
この時点で等級に該当すれば、原則としてその翌月分から支給対象になります。請求が遅れても、条件を満たせば最大5年分さかのぼれることがあります。
Q6. 双極性障害の等級(1級・2級・3級)はどう決まりますか?
双極性障害を含む精神疾患は、診断書の記載(生活能力・対人関係・就労状況等)を中心に総合判断されます。
目安としては、
-
1級:常時介助が必要で日常生活が自力で困難
-
2級:日常生活に著しい制限があり労働が困難
-
3級(厚生年金のみ):労働に著しい制限が必要
となります。
Q7. 双極性障害の申請で診断書はどれくらい重要ですか?
診断書は審査の中心で、精神疾患では特に重要です。
双極性障害は波があるため、受診日が「比較的調子の良い日」だと実態より軽く見られることもあります。躁期・うつ期それぞれの困りごと、頻度、期間、生活への影響が診断書に反映されるよう整理して伝えることが大切です。
Q8. 働いていても障害年金は受給できますか?
はい、働いているだけで不支給になるわけではありません。
勤務時間、業務内容、欠勤や遅刻の状況、職場の配慮(業務軽減・見守り・指示が必要等)、日常生活の支障を総合的に見て判断されます。障害者雇用枠や短時間勤務などの場合、受給が認められる可能性があります(※3級は厚生年金のみ)。
Q9. 受給中に働き始めたら支給停止になりますか?
必ずしも支給停止になるわけではありません。
ただし、就労状況が改善していると判断されると、更新時に等級変更や支給停止となる可能性があります。配慮を受けながら働いている実態が伝わる形で、勤務状況・支援内容・体調の波を整理しておくことが重要です。
Q10. 双極性障害で通院先が変わっています。申請に影響しますか?
通院先の変更自体が不利とは限りません。
ただし、初診日の証明や病歴の連続性の説明が難しくなることがあるため、受診状況・服薬歴・転院理由などを時系列で整理しておくと申請がスムーズです。
Q11. 何年も前から障害状態が続いています。今からでも申請できますか?
申請は可能ですが、遡って受け取れる期間には上限(原則5年)があります。
遅れるほど受給できる金額が減る可能性があり、必要書類も増えたり入手困難になりやすいので、早めの対応がおすすめです。
Q12. これから受診する予定ですが、受診前に確認すべきことはありますか?
はい、障害年金では保険料納付要件が重要です。
国民年金の未納があると要件を満たせない場合があります。受診前に直近の納付状況や免除申請の可否を確認しておくと安心です(未納と免除は扱いが異なります)。
Q13. 社労士に依頼すると何が変わりますか?
双極性障害は症状の波が大きく、書類で実態を一貫して示すのが難しいことがあります。
社労士に依頼すると、初診日の整理、診断書に生活実態を反映させる準備、病歴就労状況の整合性チェックなどを通じて、申請の精度向上と負担軽減が期待できます。
双極性障害における障害年金受給事例
当プラザで申請をサポートし、無事受給決定がされた事例です。
これから医療機関で診察を受ける方に確認です。
障害年金には保険料納付要件を満たす必要があります。
特に、現在お勤めでない方は国民年金の保険料を納める義務がありますが、
少なくとも、直近1年間の保険料が納付済であることを確認してから、
(もし未納だったら納付してから)医療機関に行かれることをお勧めします。
また、経済的な理由で国民年金の保険料が支払うことが難しい場合は、保険料の免除申請という制度もあります。「未納」と「免除」とでは、扱いが全く違うということを押さえておいてください。
また、何年も前から障害状態が続いている方に確認です。
障害年金の受給権は5年です。遡及して請求することも可能なのですが、
申請が遅れれば遅れるほど、受給できる金額が減ってしまいますし、
申請するために必要な書類が増えたり、時の経過により入手が困難になったりもします。
できるだけ早く申請することをお勧めします。
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いかがでしたでしょうか。
障害年金は不運にも、障害をおってしまった方を経済的に支える非常に重要な制度です。
しかしながら、その制度や申請手続きはとても複雑で、申請までに半年や1年もかかってしまったり、申請自体をあきらめてしまうことも少なくありません。
そんな時は、当プラザの無料相談をご活用ください。
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また、ご自身での申請が難しい場合には、障害年金の申請代行サポートもございますので、お気軽にご相談ください。
最終更新日 1か月
著者

- 社会保険労務士
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はじめまして。「東京新宿・渋谷障害年金プラザ」を運営する横堀健社会保険労務士事務所の横堀健です。
障害年金は、身体障害だけでなく、知的障害や精神疾患、ガン、脳血管疾患、心疾患、糖尿病などにより生活や仕事に支障がある方を対象とした公的年金制度です。しかし、認知度が低く、受給資格があるのに請求していない方が多くいらっしゃいます。さらに、手続きが複雑なため、途中で諦めてしまう方も少なくありません。
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